第7回セミナーレポート「婦人科腫瘍領域における国際共同臨床試験」

平成29年9月28日、大阪大学 最先端イノベーションセンター棟マルチメディアホールにて、第7回アカデミア臨床開発セミナーを開催いたしました。今回は、埼玉医科大学国際医療センターより婦人科腫瘍科 教授 藤原 恵一先生をお迎えし、「婦人科腫瘍領域における国際共同臨床試験」と題したご講演をいただきました。藤原先生は、本支援室長中谷が大学時代に大変お世話になった恩師のおひとりで、情熱ある先生だと伺っておりましたので支援室としても非常に楽しみにしていました。

婦人科の癌領域は、発生頻度は高くなく、オーファン指定できるほど稀でもないことが、世界共通の認識であることから、医師主導の国際共同試験が活発に実施されています。

実際、1990年代後半から、GCIGを中心としたアカデミアレベルでの国際共同試験が盛んに行われるようになるとともに、米国の婦人科がんに特化した多施設共同臨床試験グループ(GOG)も国際化が進み、2001年から日本からもGOG Japanとして参画していました。藤原先生は、その創設に携わりました。

当時の幾多のご経験から話されるエピソードは私共の期待を裏切ることはありませんでした。国際共同研究でともに仕事をして、築いた海外の友人とのコネクションで得られたこと、海外とのアカデミックトライアルを行ったことで経験したこと、そして何よりも国際共同研究のインフラ整備のためには、ICH-GCPに精通し英語によるコミュニケーションがとれる優秀な人材が日本チームに不可欠なことなどを明快にご説明いただきました。

また、National Cancer Institute(NCI)より初めて日本に治験薬が送られてきたとき、規制当局にはこれまでにそのような事例がなかったため、事情説明に苦労した甲斐あって、それ以降、NCIから送られる薬剤等に規制当局からの指摘が生じなくなった経験についてもお話いただきました。

さらに、GOG JapanからNRG Oncology-Japan Projectにて藤原先生とともに働いたチームメイトとの出会いが現在の成功を導いているなどについて、熱くご講演をいただきました。

また、最も厳しいご経験のひとつであるファンド獲得については、ご自身も大変苦労されたことから、中小企業の社長のご苦労がよく理解できるなど、悲喜こもごものお話に一聴講者の方から「国際共同研究の現場で実際にご苦労されたお話が伺えて、大変励みになった」と感想をいただきました。

また、質疑応答では、「海外の施設からAuditが来る場合、日本の“監査”とはどのように違うのか。またそれに対してどのように準備すればいいのか」といった質問にも、即座に具体的にお答えいただき、“監査は違反を罰するために行うのではなく、現状不十分な点を改善し、より良い試験を実施するための教育の機会(Educational Opportunity)である”ことが良く理解できました。

“外国のAuditorは監査Exit Interviewの冒頭で必ずこの話をする”とのお答えには、質問者の方のみならず、皆が心から納得していらっしゃいました。国際共同臨床試験の実施のみならず、ご自身でも臨床試験を立案遂行された経験をご講演いただき、聴衆者は、大変勉強になりました。わたしたちも本日のご講演を糧に、ますます、国際共同臨床研究の支援を推進したいと感じました。

さて次回の第8回アカデミア臨床開発セミナーは、10月19日(木)に「“企業からみた国際共同臨床試験の現状と課題”」と題して開催いたします。講師の先生は日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 クリニカルデベロップメント&メディカルアフェアーズ部 謝 宏二先生です。皆さまのお越しを国際共同臨床研究支援室一同心よりお待ちしております。

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