(セミナーレポート)2026年度 第2回 アカデミア臨床開発セミナー
匠の暗黙知とAgentic AI ― AI時代の医療と「臨床の知」の再発見
第2回アカデミア臨床開発セミナーを7月3日にオンラインで開催しました。本セミナーでは、株式会社Link & Innovation 代表取締役 山本 晋也先生をお迎えし、「匠の暗黙知とAgentic AI― AI時代の医療と「臨床の知」の再発見」と題して、ご講演いただきました。
今回の講演では、AI技術の急速な進化が医療現場にどのような変化をもたらすのか、そしてその中で医療従事者の役割がどのように変わっていくのかについて、実践事例を交えながら解説されました。講演全体を通じたメッセージは、「AIは人間の仕事を奪う存在ではなく、人間が持つ価値を引き出すパートナーである」という点でした。
まず、AIはこれまでの機械学習や深層学習の段階を超え、「エージェンティックAI」と呼ばれる新しいフェーズに入っていると説明されました。エージェンティックAIとは、単に指示に答えるだけではなく、自ら計画を立て、行動し、結果を評価して改善していく自律型のAIです。そのため、これからはAIを「使う」のではなく、「AIと一緒に働く」時代になると述べられました。
一方で、AIが高度化するほど人間の価値も高まるという点が強調されました。その鍵となるのが「暗黙知」です。暗黙知とは、経験や勘、熟練した技術など、言葉やマニュアルでは説明しきれない知識を指し、教科書や論文に書かれていないため、AIが学習しにくい領域であり、人間ならではの価値として残り続けると説明されました。医療現場ではすでにAI活用による大きな変化が起きています。従来であれば多くの時間と労力を必要としていた作業をAIが担うことで、医療従事者はより本質的な診療や研究活動に集中できるようになります。
さらには医療だけでなく介護や事務部門にも暗黙知が存在すると述べられました。最後に、日本の強みについても触れられました。日本には医療や製造業、介護現場などに世界トップレベルの暗黙知が蓄積されています。しかし、その多くは個人の経験として埋もれたままで、十分に活用されていないのが現状です。AIを活用してこうした暗黙知を形式知化し、世界へ発信していくことが日本の新たな競争力につながると主張されました。かつて日本が製造技術で世界をリードしたように、今後は「知識や経験を輸出する時代」が来るというビジョンが示されました。
次回は9月18日(金)に株式会社Gram Eyeの平岡先生、山田先生をお招きして開催予定です。皆様のご参加お待ちしております。



