(セミナーレポート)第2回 アカデミア臨床開発セミナー

医療に係るRWD/ RWEの薬事目的での利活用について

2023年8月4日、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の小居秀紀先生をお迎えし、第2回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。

小居先生は、NCNPにおいてARO 機能形成支援、臨床研究・医師主導治験の運営支援、患者レジストリの構築や運営・管理などに携わっておられ、今回のセミナーではその幅広いご経験を基に、医療に係るリアルワールドデータ及びそれらの解析から生み出されるリアルワールドエビデンス(以下RWD/ RWEという)の薬事目的での利活用についてご講演いただきました。

まず、医療におけるRWD/ RWEを取り巻く環境について述べられました。
RWD/ RWEの分野では、医薬品、医療機器、再生医療等製品(以下医薬品等という)の開発、製造販売後のいずれのフェーズにおいても、今まさに大きな変革を迎えており、米国では、「21st Century Act」において、医薬品等の臨床試験の合理化等による薬事承認迅速化の課題として取り上げられ、適応拡大の承認審査の際にRWD/ RWEが用いられる事例も出ているとのことでした。
また、日本においても、「医薬品の条件付き早期承認制度について」、「承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方」等の通知が発出され、基盤整備が進められており、製薬企業の開発戦略として患者レジストリデータを申請パッケージに実装する事例も見られるとのことでした。

RWD/ RWEを用いるタイミングとしては、希少疾患等に関する新医薬品の薬事申請の外部controlとしての利用、適応症拡大、製造販売後調査等などが考えられるとのことでした。但し、臨床データの信頼性の確保、インフォームドコンセント取得方法など倫理面への配慮等が課題となることもあるとのことでした。

次に、患者レジストリデータの薬事目的での利活用として、NCNPの取組みについて述べられました。
ビルトラルセンに関して、日本では「医薬品の条件付き早期承認制度」に基づき承認取得され、条件解除のための製造販売後の長期有効性の確認については、NCNPの患者レジストリ(Remudy-DMD)のデータで確認することになり、また、製造販売後の医薬品リスク管理計画にもRemudy-DMDを用いた調査が含められたとのことでした。

また、こうした安全監視活動へのレジストリ活用上の課題としては、レジストリ登録をしても患者背景の均一化や交絡因子の調整により、最終的に評価ができる十分な症例数を確保できなくなるリスクなどがあるが、アカデミアと企業が連携することで、安全性情報の精度を高めることができるようなスキームの構築を目指していきたいとのことでした。

以上のように今回のセミナーでは、RWD/ RWEの薬事目的での利活用についてわかりやすくご講演いただき、活発な質疑応答も行われセミナーは盛況裏に終了しました。

 

次回のアカデミア臨床開発セミナーは2023年10月6日(金)に、大阪歯科大学 医療イノベーション研究推進機構の谷城 博幸先生をお招きしてご講演頂く予定です。

次回も沢山の皆さまのご参加をお待ちしております。

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