(セミナーレポート)第3回 アカデミア臨床開発セミナー

第一部 「医療研究開発における患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement):
     AMEDにおける「社会共創」推進の取組として」
第二部 「希少・難治性疾患領域の患者・患者家族・アドボカシーの立場から当事者の研究参画を考える」

2022年9月30 日、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 研究公正・業務推進部より勝井 恵子先生、特定非営利活動法人ASridより西村由希子先生、江本駿先生をお迎えし、第3回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。
第一部では、勝井先生から、医療研究開発における患者・市民参画:AMEDにおける「社会共創」推進の取組について、また、第二部では、西村先生、江本先生から、希少・難治性疾患領域の患者・患者家族・アドボカシーの立場から当事者の研究参画についてご講演いただきました。

第一部:医療研究開発におけるPPI - AMEDにおける「社会共創」推進の取組として –

まず、AMEDにおけるPPIに関する基本的な考え方について述べられました。
AMEDにおいてPPIは、「医学研究・臨床試験における患者・市民参画」と定義され、「患者さん等にとってより役に立つ研究成果を創出すること」、「円滑な医学研究・臨床試験を実現すること」、「被験者保護に資する(リスクを低減する)こと」を理念に掲げPPIを推進しているとのことでした。

また、医療研究開発に患者・市民の視点を取り入れる意義は、研究者が気づきにくい課題や視点、すなわち患者・市民の持つ「経験知」、を提供してくれる点にあるとのことでした。

次いで、PPIに関するポイントとして、PPIは研究者と患者・市民の対話の場であり、研究参加者を募集する場でも研究を啓発・広報する場でもないことや、利益相反管理と守秘義務の重要性についても述べられました。

第二部:希少・難治性疾患領域の患者・患者家族・アドボカシーの立場から当事者の研究参画を考える


まず、ASridは患者さんやご家族、医療機関、政府、企業、高等教育機関など希少・難治性疾患分野における全てのステークホルダーを繋げる中間機関として活動するNPO法人であり、患者さんの声を広義のPatient Reported Outcome(PRO)*と捉えて利活用する活動をしているとの説明がありました。
*:PRO=患者や家族のみが知りうる認識や評価、価値観を、より医療や⽣活の場に活かしていく概念

次に、希少・難治性疾患領域の研究開発の特徴として、患者数、専門医、先行研究が少ないため、研究者が現状を完全に把握することが難しくリクルートも困難なため、患者さんやご家族ならではの経験や患者団体のネットワークにより集約された情報を収集し、相互に連携を取っていくことが重要であるとのことでした。

更に、ASridが患者さんのために実施した事例として、難病の患者さんや関係者を対象とした「臨床試験(治験)に対するイメージ調査」について説明がありました。
この調査において、臨床試験(治験)に参加したことのない回答者は、ネガティブな回答をする傾向があることが認められ、この知見から臨床試験(治験)に参加したことのない人への正しい情報伝達や患者さんへの不安に寄り添うことが重要と考えられたとのことでした。

また、別の事例として、患者さんとともにICF(Informed Consent Form)のレビューを行い、意見を纏めて事業者(ICF作成者側)にフィードバックしてICFを改善することで、患者さんの研究参画を実現させたとの説明がありました。
このように、各ステークホルダーのニーズを把握し情報収集・分析・提供を行い、患者さんが持っている課題や情報を関係者へと伝えていくことが非常に重要であるとのことでした。

以上のとおり今回のセミナーでは、PPIについてわかりやすくご講演いただき、活発な質疑応答も行われ多数の参加者を得てセミナーは盛況裏に終了しました。

次回のアカデミア臨床開発セミナーは2022年11月18日(金)に、大阪大学オープンイノベーション機構の森 正治先生をお招きしてご講演頂く予定です。
次回も沢山の皆さまのご参加をお待ちしております。

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