(セミナーレポート)第1回 アカデミア臨床開発セミナー

「大阪大学のスタートアップ支援」

2022年5月27日、大阪大学共創機構より北岡康夫教授をお迎えし、第1回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。
   

北岡康夫先生はこれまで、松下電器産業株式会社(現Panasonic)でDVDやブルーレイディスクの研究開発に従事された後、大阪大学フロンティア研究センター教授を務められ、経済産業省製造産業局では科学技術政策に関与され、その後大阪大学高度人材育成センター教授、大阪大学産学連携本部教授を歴任してこられました。

今回のセミナーではその幅広いご経験を基に、大阪大学のスタートアップ支援についてご講演いただきました。

まず最初に、イノベーションについてご説明されました。
イノベーションを起こすには、既にあるものと新しい技術やコンセプトを結合して社会的経済価値(顧客価値)を創出することが重要である、つまり、大学の研究や企業の開発事業により新技術が生み出され人々の心に通じるような製品が開発されることにより、人々の生活や社会が変わっていくことが非常に重要であるとのことでした。

次に、医歯薬分野におけるイノベーション創出についてご説明がありました。
医歯薬分野は、昨今の産業界における製薬企業の台頭や、SDGs、世界経済フォーラムなどでも重要視されている分野であり、特に附属病院がある医学部は、患者さんが抱える課題を医師が直接聞き出し把握することができる点でイノベーション創出には最適な環境であるとのことでした。

また、技術の実用化においては、特許・知的財産の権利化、事業の実現可能性、研究者自身のベンチャーへの関わり方、人材(チーム作り)、必要な開発資金、社会実装(EXITモデル)などについて理解することがポイントで、実用化を成功させるためには、実現可能性とインパクトのバランスを考慮して、ビジネスモデルと想定顧客の仮説検証を何度も繰り返して精緻化していくことが重要とのことでした。

次いで、大阪大学全体における取り組みについて述べられました。
大阪大学UICギャップファンドの導入(2011年)以降、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の設立(2014年)、Innovation Bridgeグラントの創設(2017年)がなされ、2018年に設立された共創機構のイノベーション戦略部門においては、大学発ベンチャーの起業等による事業化支援、知的財産活動の推進、人材育成などによる幅広い支援が行われているとのことでした。
また、大阪大学固有の取り組みとして、研究者の近くで支援を行う分室活動があり、医学部にある吹田分室1ではライフサイエンス分野の相談を受けているとのことでした。

最後に、関西におけるベンチャーや産学連携のサポート体制についての説明があり、産学融合先導モデル拠点創出プログラム(J-NEXUS)関西イノベーションイニシアティブ、科学技術振興機構のスタートアップ・エコシステム形成支援などが紹介されました。

このように今回のセミナーでは、北岡先生から大阪大学のスタートアップ支援についてわかりやすくご講演いただき、活発な質疑応答も行われ多数の参加者を得てセミナーは盛況裏に終了しました。

次回のアカデミア臨床開発セミナーは2022年8月5日(金)に、「グローバルヘルスに関わるPDPと現状と展開:我が国の医療展開のリバレッジとなるか」をテーマに国立国際医療研究センターの中谷比呂樹先生をお招きしてご講演頂く予定です。
次回も沢山の皆さまのご参加をお待ちしております。

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