(セミナーレポート)第1回 アカデミア臨床開発セミナー

2021年6月11日、大阪大学医学部附属病院未来医療開発部未来医療センターの佐藤文彦先生をお迎えし、第1回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。

佐藤先生はこれまで製薬企業の研究開発に携わってこられ、今回のセミナーではその幅広いご経験を基に、業界全体での動向や視点も加えて「製薬企業の研究開発とオープンイノベーション」と題してご講演いただきました。

まず「選択と集中:領域の重点化」についてご説明をいただきました。多くの製薬企業では競争優位性を確保するための開発戦略として、自社製品や研究開発の技術・ノウハウ等に基づいた得意とする重点領域を設定し、リソースを優先的に投下する研究開発が進められており、また、オープンイノベーションについても非常に真剣な取り組みが行われているとのことでした。

特にここ10年位の動きであるオープンイノベーションの背景には、製薬企業における「研究開発生産性の低下と自社オリジナル至上主義からの脱却」の流れがあるとのご説明がありました。
製薬企業の開発競争が進む中で、承認された新薬の大半がアカデミアや中小バイオテックの新規性の高いシーズからの創出であり、大手製薬企業が研究開発生産性の著しい低下により自社オリジナル至上主義から脱却せざるを得ない状況があったとのことでした。

次に、「オープンイノベーションへの対応」を行うため製薬企業では、経営陣及び現場ともオープンイノベーションに向けたマインドセットを持ち、従来からの組織体制に代わり様々な業務提携形態に対応が可能な社内組織体制へと変化させる取り組みが行われてきたと説明がありました。

早期開発段階における導入候補品を含む「研究開発プロジェクトの評価で重視される事項」には、Unmet medical needsの見極め、創薬標的の検証、リード化合物/開発候補品の物質としてのプロファイル、Target product profileの妥当性、開発計画と実行可能性、知的財産、データの信頼性などがあり、各事項のポイントについてのご説明がありました。更にステージアップや導入/買収検討の際に行われる投資採算性評価等についてもわかりやすくご教示いただきました。

最後にまとめとして、製薬企業の研究所では、限定したスコープ内での新規医療技術の実用化研究のアプローチしか採れない一方、アカデミアにおいては、科学の発展のための研究(自由な発想での研究)が可能であり、最終的な医療課題の解決/改善を目指す上においてはアプローチの多様性が重要であるとのご説明がありました。

今回のセミナーでは、佐藤先生から大変有用で興味深いお話をわかりやすくご講演いただき、セミナーは約90名もの多くの方々の参加を得て盛会のうちに終了いたしました。

次回のアカデミア臨床開発セミナーは7月16日(金)に、第一部は「製薬企業でのプロトコル作成プロセスについて」をテーマにブリストル・マイヤーズ スクイブの本堂 大祐先生、古別府 恵先生、第二部は「医薬品開発におけるバイオマーカー戦略の重要性」をテーマに日本ベーリンガーインゲルハイムの多々見 真司先生をお招きしてご講演頂く予定です。次回も沢山の皆さまのご参加をお待ちしております。

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