(セミナーレポート)第5回 アカデミア臨床開発セミナー

「アセアンの規制対応に向けた戦略的取り組み-海外展開の検討段階における重要なポイント」

2022年1月14日、クアルテック・ジャパン・コンサルティング株式会社の村山 剛先生をお迎えし、第5回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。
村山先生はこれまで国内外における医療機器の薬事認証に関する業務に携わってこられ、今回のセミナーではその幅広いご経験を基に「アセアンの規制対応に向けた戦略的取り組み-海外展開の検討段階における重要なポイント」と題してご講演いただきました。


まず、アセアンにおける最も重要な医療機器規制である「AMDD (ASEAN Medical Device Directive/ アセアン医療機器指令)」についてご説明がありました。
AMDD は、アセアン加盟国が医療機器規制を可能な限り統一するために2015年に制定された共通指針であり、IMDRF*(International Medical Device Regulators Forum/ 国際医療機器規制当局フォーラム)の決定事項に基づいた枠組みとなっており、リスクに応じた医療機器クラス分類やCSDT(Common Submission Dossier Template/ 統一申請様式)の採用などEUの規制と類似した内容になっているとのことでした。
* 世界各国の医療機器規制当局による活動であり、国際的な医療機器規制の整合化を促進するもの

次に、「規制の三要素から⾒た検討段階における重要なポイント」について述べられました。
医療機器に係る規制の三要素には、医療機器の安全性、有効性に関する「市販前許可」、有効で安全な医療機器を継続的に設計・製造するためのプロセス管理に関する「品質マネジメント」、市販後の監視と問題事象発生時の対応に関する「市販後監視」があるとのことでした。また、留意すべき点として、「市販前許可」における医療機器の該当性においてアセアンと日本間で差異があること、取扱説明書の現地語対応などにおいて品質担保の難しさがあること、またJIS規格ではない国際規格の試験報告書が要求される場合もあることなどが挙げられました。

続いて、医療機器の海外展開の進め方について説明がありました。
世界的に薬事規制の整合化が進む中、先行する欧州の規制が最も厳しいため、まずは欧州で許可を得てからアセアンへ展開することで薬事対応がスムースに行えるとのことでした。
一方で、最近欧州で新たに適用された(MDR: Medical Device Regulation)により規制が厳格化していることから、まずはアセアンから展開するケースも多く、そうした場合、日本の許可が申請の前提条件とされる国や、日本の許可により迅速審査が適用される国もあるとのことでした。

次に「市販前許可」の具体的な事例として、カスタムメイド医療機器、プログラム医療機器について述べられました。
カスタムメイド医療機器については、通常の製品登録ルートとは別のExemption申請・通知によるルートで製品流通が可能とのことでした。
また、プログラム医療機器については、国際規格であるIEC 62304 (Medical device software – Software life cycle processes)が主たる規制要件となっており、この要件を満たすことで申請がスムースに進められるとのことでした。

最後に、海外展開の際に認められる「市販前許可」の課題として、審査期間の長期化があり、迅速な許可取得のためには、最新の規制要求を認識して前例主義にとらわれずに主体的に薬事対応をしていくことが重要とのことでした。

このように今回のセミナーでは、村山先生からアセアンにおける医療機器の規制についてわかりやすくご講演いただき、活発な質疑応答も行われ多数の参加者を得てセミナーは盛況裏に終了しました。

次回のアカデミア臨床開発セミナーは2022年2月4日(金)に、「医療機器の承認審査とプログラム医療機器について」をテーマに医薬品医療機器総合機構(PMDA)の河野 典厚先生をお招きしてご講演頂く予定です。
次回も沢山の皆さまのご参加をお待ちしております。

第6回アカデミア臨床開発セミナーに関するご案内はこちらから。

ページTOPへ戻る