(セミナーレポート)第1回アカデミア臨床開発セミナー  
「リアルワールドデータを活用した医薬品安全性評価」

5月18日(金)、医療品医療機器総合機構(PMDA)の医療情報活用部長の宇山佳明先生をお迎えし、2018年度第1回目のアカデミア臨床開発セミナーを最先端医療イノベーションセンター棟マルチメディアホールで開催しました。

宇山先生には、昨年12月にも「ICH-E17(国際共同治験)ガイドライン」と題して、ご講演をいただきました。今回は、これに続く2度目のご登壇となりました。今回のセミナーでは「リアルワールドデータを活用した医薬品安全性評価」というタイトルで、本年4月よりPMDAで本格稼働した「MID-NETR」と呼ばれる医療Database(DB)について、開発の意図やご苦労を交えて利活用の実例をご紹介いただきました。

冒頭で「承認時のデータには限界がある!」と力説されました。

承認審査迄に新薬が使用される症例数は、数百から数千が一般的である一方、市販後には多くの患者さんにそのお薬が投与されます。したがって、開発段階では検出できない種々の安全性情報(副作用)が市販後にしばしば検出されます。

PMDAは、この安全対策として「MIHARI project」を稼働させ、これらの情報収集を効率的且つリアルタイムに行うため、電子診療情報(電子カルテ、検査データ、レセプトデータ、DPCデータ等)に着目し、国内23箇所の医療機関の協力の基、IT技術を駆使してシステムを構築しました。施設ごとに治療方針が異なることや、検査データが標準化されていない状況で、医療機関のデータを統合して大量のデータの信頼性を担保する仕組みを構築に想像を絶するご苦労があったようです。これらのデータを基に注意喚起(承認後の添付文書の改訂)となった実例が紹介されました。

 

「MID-NET®」は、製薬企業のみならずアカデミアでも利用可能であり(有償)、より科学的で効率的な安全性監視活動や疫学研究等にも利活用して欲しいとのお話でした。

安全性のみならず有効性に関する評価も期待できることから、「リアルワールドデータ」や「ビッグデータ」という呼称で、臨床検査データ等も含むこの種の医療データベースを活用した医薬品開発にも着手しているとのことでした。宇山先生は、アカデミアにおいてもこれらの積極的な利用を呼びかけられてご講演を締め括られました。

 

臨床試験を通じて医薬品や医療機器の承認取得を目指している我々も、「リアルワールドデータ」や「ビッグデータ」には注目しています。宇山先生のお話は、とても先進的でインパクトがありました。当日は、50名を超える参加者からの質疑応答も数多くなされ、今後より幅広く種々の医療情報を網羅したDBへの発展も目指されるとのご説明に期待が膨らみました。

 

次回の第2回アカデミア臨床開発セミナーは、最先端医療イノベーションセンター棟マルチメディアホールにて、新潟大学医歯学総合病院 中田 光 先生より、“希少疾病治療薬開発の光と影 ~ダーウィンの海を越えて~”と題したご講演を6月15日 (金)17:30~19:00に予定しています。

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