(セミナーレポート)第7回アカデミア臨床開発セミナー
2021年2月12日、厚生労働省医政局研究開発振興課より吉岡恭子先生をお迎えし、第7回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。
吉岡先生は、これまで「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(以下「ゲノム指針」)及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(以下「医学系指針」)を統合した「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下「統合指針」)の策定に携わってこられました。そのご経験から、今回のセミナーでは、統合指針策定に係るポイントなどについてご講演頂きました。
まず、「統合指針策定の背景」について、2018 年 8 月から文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省合同会議において議論が行われ、両指針間の条文の整合性、ゲノム指針の条文の適正化などの観点から検討が行われた結果、医学系指針の規定内容を基本として、両指針を統合した新たな指針が策定されることになったとのご説明がありました。
次いで「統合指針策定に係るポイント」についてのご説明があり、「統合指針の構成」、「担当者別規定から行為別規定への変更」について、また、「新設の項目」として1)「用語の定義」、2)「電磁的インフォームド・コンセント」、3) 「研究により得られた結果等の取扱い」、4) 「手続きの主体変更、原則一括審査」、5)「倫理審査委員会(審査と報告)」についてご説明がありました。
まず、「統合指針の構成」、「担当者別規定から行為別規定への変更」については、統合指針の構成が大幅に変更され、第2章において「研究を実施する上で遵守すべき責務や考え方」などの概念的な内容が示され、また、第3~7章においては「研究者等が研究を実施する上で行う具体的手続等」が示される形で整備されたとのことでした。
次に「新設の項目」については、以下の各事項について主なポイントをご説明いただきました。
1)「用語の定義」
「人を対象とする生命科学・医学系研究」、「研究協力機関」などの定義が示された。
2)「電磁的インフォームド・コンセント」
インフォームド・コンセント(以下「IC」)の手続きの中で電磁的手法を用いることの留意点が整理され、①デジタルデバイスを用いて説明・同意の取得を行うこと、また、②ネットワークを介して説明・同意の取得を行うことなどを想定し、「文書によるにICに代えて、電磁的方法によりICを受けることが出来る」旨が示された。
3)「研究により得られた結果等の取扱い」
「遺伝情報の開示」に係る条文の整理が行われ、研究で得られた結果等をどのように適切に研究対象者に説明するのかについての概念や手続きが新たに規定された。
4)「手続きの主体変更、原則一括審査」
① 研究計画に関する倫理審査委員会への付議やその他の研究実施に係る手続の主体が、「研究機関の長」から「研究責任者」へと変更され、② 多機関共同研究においては、倫理審査に係る手続の効率化を図るため一括審査が原則化された。
5)「倫理審査委員会(審査と報告)」
迅速審査の規定について、「研究計画書の軽微な変更に関する審査」のうち、委員会が事前に確認のみで良いと認めたものについては、報告事項として取り扱うことができるようになった。
以上のように統合指針策定に係る議論や内容についてわかりやすくご説明をいただいた後、現在、検討が行われている「臨床研究法」の見直しについてもご説明いただきました。
課題として挙げられている論点には、「事務手続き負担の軽減(届け出・変更に伴う事務量軽減、 COI 管理の施設負担軽減)」、「がん、小児の分野で大きな問題となっている「適応外使用」の問題」、「臨床研究法における観察研究の位置づけ」、「国際的規制との整合性に必要な「スポンサー」概念の導入」などがあるとのことでした。
このように今回のセミナーでは、吉岡先生から大変有用で貴重なお話をわかりやすくご講演いただき、セミナーは約225名もの多くの方々の参加を得て、多くの質問をいただき活発な議論も交わされ盛会のうちに終了いたしました。
本年度も、医療分野の研究開発について、ご高名な講師の先生をお招きして、さまざまな観点からご講演をいただき、参加者の皆さまに充実したセミナーを提供させていただきました。次年度も研究者の皆さまに有益な情報をできるよう、事務局一同尽力したいと考えております。来年度の予定がきまりましたら、随時ホームぺージでご案内をさせていただきます。皆さまのご参加をお待ちしております。