(セミナーレポート)第6回アカデミア臨床開発セミナー

2020年12月11日(金)、国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部の中岡竜介先生をお招きし、「医療機器の生物学的安全性評価 ― 国内規制と国際標準の関係について ―」をテーマにご講演頂きました。新型コロナウィルス感染状況を鑑み、今回もオンラインのみでの開催となりましたが、近年“流行り”となっているAIを用いた医療機器についてもご解説頂き、充実した内容の1時間半となりました。

 

 

 

 

 

生体安全性は医療機器の開発において非常に重要なキーとなるものです。絶対に安全でなければならないと言うことは難しく、医療機器を安全に使用するうえでどのようにバランスを取って評価していくのかについて、ご講演では以下のポイントに沿ってわかりやすくご説明くださいました。

・ 医療機器の生物学的安全性評価
・ 国際的な動向と標準化の現状(ISO/TC194)
・ 国内規制(ガイダンス)とJIS規格
・ 今後の展開

評価には国際的に認められた考え方、および試験方法が存在しており、現状、ISOで定められた規格が国内規制に反映されており、欧州ではほぼそのままヨーロッパ標準に落とし込み、規制に使われています。アメリカでも鍵となる部分はアメリカ国内規格に落とし込み、規制に使用されています。今後、開発した医療機器が生体と何らかの形で接触する場合には、ISO/TC194で作成された国際標準を参照し、安全性評価を行わなければならないとご解説をいただきました。

次に国内規制(ガイダンス)とJIS規格についてご説明頂きました。国内ガイダンスはパート1と呼ばれるISO 10993-1の翻訳版に近い内容となっています。そしてISOの一つの側面である産業における標準化として、国内独自の要求事項は入れず、パート1の直訳版を業界団体が中心となって改正し、発行したものがJIS T0993-1です。医療機器分野における国際標準のJIS化が推進されたのは、産業界としては国内標準と国際標準が同じであった方が、海外展開の際に都合がいいという理由があるためです。

今後については、化学分析をどのように安全性評価に使用するかということが重要になるとのことです。動物愛護の観点から生物学的安全性評価において化学分析を利用することは世界的な潮流になっており、その流れは今後も止められないであろうとのことです。しかしながら化学分析による生物学的安全性評価を実際に行うとなると、かなり複雑なフローとなっており、国立医薬品食品衛生研究所で一定のプロトコルを作成しようと討議と研究を進めておられるところです。さらに、今後、国立医薬品食品衛生研究所でも懸案や現状紹介、啓発を行っていかれるそうです。

最後に、AIの実装化が医療分野でも進み、早急な対応が必要になっている現状で、国立医薬品食品衛生研究所で行っておられる事業についてご紹介頂き、AIの課題点、問題点も含めお話頂きました。

参加者からの質問に対しても、詳しくご回答頂き、特に海外展開を考えている研究者の方々にとってもとても有益な1時間半となったのでは、とうれしく思います。

私たち、事務局では、今後も研究者の皆さまのお役に立てるトピックを設け、それに精通する講師の先生をお招きしていきます。皆さまのご参加をお待ちしております。

ページTOPへ戻る