(セミナーレポート)第3回 アカデミア臨床開発セミナー

「PMDAにおける国際協働に向けた取り組みとアジア医薬品・医療機器トレーニングセンター (PMDA-ATC) の活動」

2021年8月20日、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構国際部 アジアトレーニングセンター事業課長(アジア第一課長併任)緒方 映子先生をお迎えし、第3回アカデミア臨床開発セミナーをオンラインで開催いたしました。

緒方先生はこれまで医薬品の審査業務、安全対策業務及びアジア諸国の規制当局担当者向けのセミナーの企画・運営等に携わってこられ、今回のセミナーではその幅広いご経験を基に、「PMDAにおける国際協働に向けた取り組みとアジア医薬品・医療機器トレーニングセンター (PMDA-ATC) の活動」と題してご講演いただきました。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の役割

まずPMDAの役割について、PMDAは厚生労働省が医療機器等行政にかかる権限を行使する上での重要な根拠を提供する役割を担っており、医薬品・医療機器等の承認審査、安全対策、健康被害救済の3つを柱とした品質、有効性、安全性確保に関する業務を行っているとの説明がありました。

世界に先駆けて革新的医療機器が承認される環境整備

次いでPMDAにおける医療機器の審査体制について説明がありました。医療機器ユニットは6つの部室から構成されており、今後、AI等を活用した医療機器がより一層増えることが見込まれることから、今年4月にはプログラム医療機器審査室が新設されたとのことでした。

医療機器の審査期間については、新医療機器の優先品目は10カ月、通常品目は14カ月というように目標審査期間が定められているとのことでした。

また、審査期間短縮のため2019年11月に法改正され2020年9月に施行され、(1)先駆け審査指定制度の法制化、(2)特定用途医療機器の早期承認制度 (小児用医療機器等)、 (3)条件付き早期承認制度の法制化、(4)医療機器の特性に応じた承認制度(IDATEN/PACMP)等の迅速承認のための制度が設定されたとのことでした。

こうした様々な取り組みが功を奏し、現在、審査ラグについてはほぼ解消されているとのことでした。

PMDAにおける国際戦略

次いで、国際戦略については、2015年に「PMDA国際戦略 2015」が策定され、2023年度までの中期計画で取り組むべき国際活動が定められたとのことでした。

具体的には、(1)国際的リーダーシップの発揮、(2)二国間関係の強化、(3)アジアトレーニングセンターの充実強化、(4) 活動内容の世界への積極的な発信等の活動があり、積極的な取り組みが行われているとのことでした。

また、アジアにおいては、日本とアジアのドラッグラグ解消に資するよう規制調和推進のための「アジア健康構想に向けた基本方針」が2016年に決定され、それに基づき「アジア医薬品・医療機器規制調和グランドデザインと実行戦略」が具体的な取り組みとして策定されたとのことでした。

その主たる対応としては、(1)アジアンネットワーク会合などのプラットフォーム形成、産業界主導との連携、アジア各国ごとの専任担当者配置などの体制強化、(2)治験拠点の整備支援などの治験体制の充実、(3)国際標準化、リライアンス促進などの規制調和の推進等があり、迅速な海外展開にあたり国際的な規制調和が重要であるとの説明がありました。

アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター(PMDA-ATC)の活動

次いで、2016年に設立されたPMDA-ATCの活動について説明がありました。

PMDA-ATCが提供するトレーニングを通じて、日本の制度や規制調和の重要性の理解を深めることで、将来のアジア地域の規制調和に向けた基盤作りを進めるとともに、日本への信頼醸成につなげることを活動方針としているとのことでした。

多国間協力

次に、多国間協力について、ICMRA(薬事規制当局国際連携組織)、ICH(医薬品規制調和国際会議)、APEC-LSIF-RHSC(アジア太平洋経済協力ライフ サイエンスイノベーション規制調和執行委員会)、IMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)など多国間会合による国際活動についての説明がありました。

アジア諸国との連携

最後に、アジア諸国との連携におけるリライアンスの重要性や二国間交流について説明がありました。

WHOの定義では、リライアンスとは「ある地域の規制当局が自身の決定を下す際、他の規制当局や信頼できる機関が実施した評価もしくは他の信頼できる情報を考慮に入れ、重要な意思決定をする行動のことである」と定義づけられているとのことでした。

APEC域内でもリライアンス活動の浸透により、ICHやPIC/Sへのメンバー加入が増加しており、各国の承認審査等の評価結果を活用することによる審査効率化やGMPの国際調和の推進が図られているとのことでした。

また、PMDAは日本とアジア諸国との二国間交流を行い、薬事関係者間の相互理解を深め、医薬品・医療機器規制や開発のための協力体制の基盤形成に努めているとのことでした。

 

このように今回のセミナーでは、緒方先生からPMDAの取り組みをはじめ、アジアを中心とした国際関係の取り組みについてわかりやすくご講演いただき、セミナーは多くの方々の参加を得て盛会のうちに終了いたしました。

次回のアカデミア臨床開発セミナーは11月を予定しています。沢山の皆さまのご参加をお待ちしております。

 

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