(セミナーレポート) 第5回アカデミア臨床開発セミナー 
「ICH-E6(R2)を踏まえたリスクベースドアプローチ -モニタリングや品質保証体制に対する影響-」

今年度5回目のアカデミア臨床開発セミナーは、1月11日(金)にヤンセンファーマ株式会社開発監査部の「松下 敏」氏をお迎えし、「ICH-E6(R2)を踏まえたリスクベースドアプローチ-モニタリングや品質保証体制に対する影響-」と題して、最先端医療イノベーションセンター棟マルチメディアホールでご講演をいただきました。松下先生は、1989年から医薬品開発職として主にモニタリング関係の業務を経験され、現在は医薬品および医療機器の開発監査に従事される傍ら、2004年から日本製薬工業協会 医薬品評価委員会にて活動を開始されて、ICH-GCP、GCPガイダンス等の規制についての対応を中心に精力的な活動を続けられておられます。

ICH-E6(R1)が策定されてから既に約20年が経過し、その間に臨床試験の規模や環境は大きく変化しました。その後、ICH-E6 (R2)は、2013年から検討が開始されて2016年11月にStep4に至り、ICH Webページにてその内容は公開されています。今年度内にも我が国においても最終化(Step5)される予定ですが、改定内容は全面改定ではなく補遺(ADDENDUM)として追記がなされたことが特徴です。今回の改定は、補遺との扱いではありますが、今後の我々の活動に大きな変革をもたらし、日本国内のみならずEU、米国をはじめカナダやスイスにとどまらず、世界各国に非常に重要な影響を及ぼすものとなっています。今回のセミナーの内容は、追記されたRisk Based Approachに焦点を当て、国内の臨床試験におけるモニタリングや品質保証体制に対する影響を分かり易く解説して頂くものでした。

具体的には、この20年間で変化した環境における用語(Certified Copy、Monitoring Plan、Validation of Computerized System)の定義のご説明から始まり、日本では良く混乱するICHに定義されるInvestigatorとSponsorの違いとその責務の解説、Risk based Quality Management System (QMS)について紹介されました。とりわけ、ICH-E6(R2)におけるQMSの構成要素として、①組織・体制、②明確なプロセス、③Issue Management、④記録作成と保存、⑤Risk Management、⑥外部との連携に分類し、構成要素毎の現状と課題を明確にしつつ、優先順位を付けることの重要性を説明されました。

昨今は色々な領域でリスク分析やリスク管理という抽象的な言葉が溢れており、具体的に「誰が何をしていいか分からない」といった声をよく耳にします。医薬品のリスクは被検者保護の観点とデータの信頼性の2本柱であり、リスクを踏まえた最適な開発を行うために、まずアカデミアのAROにリスク評価が可能な体制を整備する必要があると述べられました。日本社会はまだリスク分析に慣れていないので、研究責任者自身が考えて臨床試験をコントロールすべきとご講演を締め括られました。

ご講演後もフロアから数多くの質問が出され、一つ一つ丁寧にご回答を頂き、拍手とともに閉会となりました。

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