(セミナーレポート) 第4回アカデミア臨床開発セミナー
「医療機器を実用化するために考えておきたいこと」

今年度4回目のアカデミア臨床開発セミナーは、10月26日(金)に東北大学病院 臨床試験推進センター 開発推進部門の池田浩治先生をお迎えし、最先端医療イノベーションセンター棟マルチメディアホールで開催しました。

池田先生はPMDAの医療機器審査部門での長いご経験を基に「医療機器を実用化するために考えておきたいこと」というタイトルで、PMDAでの医療機器の審査および大学での医療機器の開発推進について、これまで取り組んでこられたご経験と医薬品開発との違いなどについて詳しくご紹介いただきました。

ご講演は、池田先生は豊中のご出身であり「なかなか関西弁が抜けない」との会場をリラックスさせるお話から始まりました。冒頭で、医療機器と医薬品の薬機法上の違いや承認要件や開発の流れの違いについて紹介され、多種多様な医療機器の承認審査を進めるなかで、医薬品とは異なり確立された評価法や承認基準のない医療機器は開発者と審査サイドの双方向のフィードバックにより開発が行われるという現状が紹介されました。池田先生自身がPMDAでの審査の際に医療機器が使用される医療現場を何度も体験・同席され、その医療機器の医療現場でのメリットや課題を直接体感され審査に当たられていたとのお話も印象的でした。医療機器の臨床試験は被験物質があらかじめ特定される医薬品開発と異なり、臨床試験を実施しながら改良を重ねてニーズ主導で完成させていく医療機器の開発手法が良く理解できました。

医薬品のみならず医療機器においても、日本発の革新的な医療機器が出てこないというデバイスラグとも呼ばれる課題が指摘されており、本邦における医療機器に関する輸入超過の問題にも触れられました。この問題の原因がどこにあるかも深く考察され、アカデミアにありがちな先進技術的な高度化よりむしろ、「患者に新しい価値を提供することができるか」という視点でのニーズ主導のアプローチの重要性を強調されました。また、日本国内に足りないものとして、医療機器の開発分野での「ドライバー(開発ナビ役)」と「製造販売業者」の力量・経験不足を指摘されました。

 

ご講演の後半で池田先生は、別の視点として薬害や健康被害についても触れられ、PMDAでは科学的合理性のみで審査を行っているわけではなく、開発者は社会的合理性(社会受容性)を踏まえることが重要であり、社会全体のリスクベネフィットと個人のリスクベネフィットは異なることなどについて実例を交えて詳しくご紹介いただきました。日本社会はまだリスクに慣れていないとも語られ、これらを踏まえて最適な開発を行うために、レギュラトリーサイエンスの必要性を強調されました。最適な開発環境の創出を目指して、規制の振り子に世間を振り回すことなく、一人の患者(個人)も犠牲にしないアクセルとブレーキのバランスこそが必要だとご講演を締め括られました。

ご講演後もフロアから数多くの質問が出され、一つ一つ丁寧にご回答を頂き、拍手とともに閉会となりました。

ページTOPへ戻る